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~Deep Dive into HRシリーズ 第2弾ウェビナーレポート〜今までのアタリマエをリセットする。採用チャネル設計、全部見せます!

LiBでは、「今までのアタリマエをリセットする。採用チャネル設計、全部見せます!」と題し、Chatwork株式会社のピープル&ブランド本部 副本部長 兼ビジネス本部HRBP 吉成さんをお招きし、中途採用に課題を抱える企業の人事担当者様を対象にしたウェビナーを2022年12月13日(火)に開催しました。

本ウェビナーでは、Chatwork社の採用で意識してきたことや、チャネル設計、KPIモニタリングの要点について、「LiBのRPDサービス」責任者の江成が話を聞きました。

吉成 大祐氏(Chatwork株式会社 ピープル&ブランド本部 副本部長 兼ビジネス本部HRBP)
PROFILE
吉成 大祐氏(Chatwork株式会社 ピープル&ブランド本部 副本部長 兼ビジネス本部HRBP)
ヤフー株式会社にて採用マネージャーを経験後、PayPay株式会社の立ち上げに参画。同社の採用部門の立ち上げ、採用責任者として携わる。その後株式会社ファーストリテイリングにてIT領域の採用を担当後、2021年2月よりChatwork株式会社にて人事責任者を務める。年間100名程度の採用のリードから制度設計、組織作りまで幅広く携わり、現在はピープル&ブランド本部副本部長として人事全体を統括。
株式会社LiB RPDサービス責任者 江成 充
PROFILE
株式会社LiB RPDサービス責任者 江成 充
2006年インテリジェンス(現パーソルキャリア)に新卒入社。人材紹介の法人営業・キャリアアドバイザーに従事。求人広告「doda」の営業マネジメントに従事する傍ら、新サービス(管理職1on1研修・採用面接官トレーニング)も企画。2017年より採用責任者・人事向けに1か月に9本のセミナーの企画・登壇。2018年LiBに入社。2021年夏に女性に特化した社外取締役の就任支援サービスを立ち上げる傍ら、複数社の採用力向上支援に携わったことをきっかけにRPDサービスを立ち上げる。

はじめに

Chatworkにて人事を統括している吉成と申します。今回は、この1年半で倍の組織規模に成長したChatworkが、採用活動においてどのようなポイントを意識していたのか、そして具体的にどのようなチャネル設計をしていたのかをお話させていただきます。

まずは、自己紹介をさせてください。

新卒でヤフーに入り、5年目に人事に異動しました。新卒・中途の採用マネージャーを経験後、PayPayの立ち上げに参画し、1000名規模の営業採用やグローバルエンジニア採用なども経験しました。10年目の節目の年にファーストリテイリングに転職し、グローバルIT部門や、GHQ(グローバル・ヘッドクオーター)のエグゼクティブ採用を経験後、もっと事業成長にダイレクトに介在したいと考え、Chatworkにジョインしたのが2021年の頭です。

Chatworkは現在300名ほどの組織ですが、実はけっこう歴史の古い会社で、設立は2004年。上場したのは2019年です。その頃は約100名ほどでした。

その後、コロナの影響で世の中の働き方のあり方が大きく変化し、オフィス出社だけではない多様な選択肢ができました。するとあらゆる会社で、コミュニケーションはこのままでいいんだっけ?という問題にぶつかり始めます。それをきっかけに、2020年以降、ビジネスチャットの需要が増えただけでなく、DXへの関心度が急速に高まりました。そのタイミングで当社も事業戦略をよりシャープにし、加速させていくことになったのです。

私がジョインした2021年の年頭は約160名ぐらいの組織で、当時の人事は4名ほどで、ほぼ全員が採用をやっている状態でした。新卒採用も中途採用も安定的に採用ができ、かつ採用後の組織も見据えて人事の体制を整え、約1年半かけて倍以上の組織にしていきました。この成長を創るための戦略に関与させていただきました。

これだけ急に人を増やすと、組織崩壊しない?といった質問もよく頂戴しますが、今日は採用のお話が中心となりますので、それはまた別の機会にお答えさせてください。

 

採用活動において意識してきたポイント

さて、ここから本題に入ります。1年半で倍の組織規模に成長したChatworkが意識してきた下記の3つのポイントを、1つずつ振り返りながらご紹介させていただきます。

採用は極端に言うと、この3つをどれだけ緻密にやりきれるか、の世界だと思っています。

これまでヤフーとファーストリテイリングで、新卒や中途採用、エンジニアやエグゼクティブ採用などあらゆることをやってきましたが、結局はここに行きつくのではないかという感覚があります。それを再現性を持って手がけてきました。

ではまず、1つ目からご説明します。

 

1.作りたい組織イメージの具体化から採用ターゲットの明確化

これは、やみくもに人を増やすのではなく、いつ時点で事業をどういう状態にしていくか、そのために組織はどうあるべきかをまず描くことが大事だということです。これがないと何のためにこの求人を採用しているのか、どの順番で採用すべきなのかの優先順位もつけられないからです。

私がジョインしてまずやったことは、約1年後の2021年の年末に、事業や組織がどういう姿になっていたいのかを議論することでした。採用はあくまでも、事業成長のためのひとつの「手段」です。組織づくりや人的ケイパビリティの強化は、必ずしも採用でないと実現できないものではありません。だからこそ、なぜ「採用をするのか」に立ち戻る必要があるのです。本当に採用という手段が適切なのかを精査する、というわけです。

いざ採用すると決めた時に陥りがちなのが、「ものすごいスーパーマン」を求めるジョブディスクリプションになってしまうことです。気持ちはとてもよくわかるのですが、WANTを積み重ねていくと、「現実的にこんな人います?」という採用ペルソナにぶち当たることが多くあります。。

そのポジションのMUST要件は何なのか、そしてどのぐらいの時間軸で何をしてほしいからこの要件が欲しいのか、そこに過不足がないか、を整理しなければなりません。現実的に採用市場にいない人を求めても無理がありますし、いないかもしれないけどいつか出会えるかも?という可能性に賭ける場合は、それなりの時間をかける覚悟もセットで必要となります。

私がChatworkで置かれていた状況では、2020年年末あたりからありたい組織の姿ができており、そこから逆算できたので、要件を満たせる人はどんな人物か?ということを精査しやすかったです。

要件は、1か月ごとに振り返る機会を設けていました。個人的な感覚では、3か月間同じ要件で募集してうまくいかなかった場合、そのまま続けるのは難しいと思っています。なので、1〜2か月ぐらいでチューニングをしていきました。その結果、空いていたマネージャーポジションとメンバーの採用をほぼ同時に実施することができました。

 

2.どの採用チャネルで、どう採用していくイメージか(採用計画)

次は、採用チャネルのお話です。ポジションごとにチャネルを決め、KPIを設定するのがポイントです。例えばインサイドセールス、マーケティング、データサイエンティストという3つのポジションにおいて、要件はもちろん、市場にどのぐらいいるかも全く異なります。さらにエージェントとダイレクトリクルーティングでもそれぞれ特性が違います。さらにエージェントの中でも、大手の中でもリクルートさんとパーソルさんでは全然違いますし、中堅と大手でもそもそも違います。ダイレクトリクルーティングでも、ビズリーチとWantedlyでは全く違いますよね。それらの強みや特徴をそれぞれ理解して、どのポジションにおいてどこに網を張るかを考えるのが重要なのです。

例えばインサイドセールス募集で「若手の営業経験者」ということであれば、個人的な感覚ではダイレクトリクルーティングならWantedlyだし、がさっと大量に応募獲得するなら大手のエージェントになります。一方でマーケティングやデータサイエンティストの場合は、セールスと同じやり方ではうまくいかないわけで、ポジションごとにチャネルとコミュニケーションを変えていく必要があります。

ポジションごとにKPIも変わってきますが、大事なポイントとして経験上共通しているのが書類選考合格数(≒面接対象人数)です。例えば、5名採用したいのであれば、5名の応募を獲得するのが最も生産性が高いことになります。100名の応募から10名合格者を出し、そこから5名を採用するのとは、アプローチが全然違いますよね。ですから、ポジションごとにチャネルを変え、KPIの追いかけ方を変え、どのように各チャネルのキーマンと握りにいくのかを設計するのがポイントです。

では、Chatworkでは具体的にどのようなアクションをしたのかをご紹介します。

(1)大手エージェント

まず大手エージェントの場合は、多くの登録者がいるため、そこから応募数を獲得するのが主な目的です。でも、その中で書類選考の合格者が全然いなければ意味がありません。なので、「多くの応募を獲得すること」と、「その中で歩留まりをどう上げていくか」のアクションが重要となります。

まず心がけたのが、各エージェントの社内構造を理解し、担当の方が動きやすい土壌を整えることです。例えば定例MTGを設け、RAの方と綿密にやりとりをしたり、応募数を獲得するためにChatwork側では何ができるのか、現実的に可能なライン(応募数)はどこなのか、といった共通の目標を設定したりしました。さらに大手の場合は、体制上RAとCAに分かれているところもあれば、両面で対応しているところもあります。当たり前ですがそれぞれ目標の置き方も異なり、それを踏まえて、RAの方と一緒に応募喚起率をどう上げていくかを考えました。

気にするべきポイントは、エージェントから候補者に対して求人をいかに紹介してもらえるか、そして候補者の方に「受けます」と言ってもらえるかどうか、です。その仲介方法としては人が介在するところもあれば、システムで対応しているところもあります。だから一概に「応募喚起」と言っても、ジョブディスクリプションを書き換えるというやり方もあれば、CAの方に説明して喚起するというやり方もあるわけです。そういう、会社ごとの攻略方法を理解するのが非常に大事だと思いますね。

あとは、アトラクトストーリーの共有も重要です。私たちからは候補者の方にアトラクトをしますが、一方で各チャネルの担当者の方にも深く理解してもらう必要があります。「この会社おもしろそう」と思ってもらえないと、そもそも紹介してもらえないですからね。アトラクトストーリーを、私たちと同じ解像度で語れるようになってほしいので、情報共有しながら疑問点を解消できるようにコミュニケーションを取っていきます。

また、凡事徹底的な話になりますが、書類不合格理由の共有も大事ですね。逆に通過の理由も、良かった点を細かく伝えるようにしています。コミュニケーションはチャット+電話+オンラインMTGで、できるだけタイムリーに共有できるようにしています。

(2)中堅エージェント

次に、中堅エージェントの場合です。大手に比べてそこまで多くの候補者を抱えていないので、大量の応募数を獲得するのは難しいですよね。そもそも中堅エージェントの強みは「量」ではありません。

ですから、たとえば5名応募があった時に、その5名をいかに内定につながる5名にするかを考えるのが重要になります。一人一人の確度を上げるためにできることは、例えばブラインドレジュメや略歴にてすり合わせをさせていただき、面接(面談)確約アプローチをしたり、「応募」ではなく「カジュアル面談」スタートを積極的に行うことで応募喚起率を向上させたりしていました。

また、中堅エージェントはどのような層の人材に強いのか、特徴が際立っていたりする場合があるので、それに合わせてどのエージェントにどのポジションを任せるかの精査をするのがポイントです。

(3)ダイレクトリクルーティング

ダイレクトの場合はスカウトの送付数、返信率、返信率がKPIになるので、そこを中心に数字をモニタリングします。また採用市場に対象者が少ない求人に関しては、スカウト文面をいかにこだわって作成するか、も重要となります。Chatworkの場合、ボトルネックとなっていたのは、カジュアル面談実施者からの応募までの移行率でしたので、ダイレクトソーシングツールを介してのコミュニケーションとATSを通じてのコミュニケーションを以下にスムーズに接続させるかを意識して、対策していました。

特にエージェント活用においてお伝えしたいのは、エージェントとの「距離感」を意識するのが非常に重要かつ効果的だということです。自分たちが思っている以上に、エージェントの皆さんは、実は前提となる自社の情報を知らなかったりします。インプットはしているものの、前提が理解されていないので、どうしても一方通行のコミュニケーションになってしまいがちです。

その理解をどう深め、いかに会社のファンになってもらい、「この会社のために頑張ろう」「この会社で結果が出せる」と思ってもらえるかを考えるのが、Feeを超える大事なポイントだと思いますね。

 

3.採用計画と実態の把握、適切なモニタリングと打ち手の実行

最後は、アクションとモニタリングのお話です。さまざまなアクションをする中で、当然すべてがうまくいくわけではありません。ですからモニタリングに関しても、細かく見ようとするとキリがありません。ポジションごとに一つ一つ見ていくと、運用するだけで大変になってしまいます。要点を押さえ、必要な時に深掘っていくことがポイントです。

これまでの経験上、私が意識すべきだと考えているポイントは、Weeklyではポジション毎の応募数、面接パイプライン数(その時点での面接予定数)です。書類選考や面接の合格率は、そんなに毎週変わるものではありません。だから応募数や面接対象になる人のボリュームがどのくらいなのかに意識を向けます。

Monthlyでは、応募数・書類選考合格数・内定数・内定承諾数です。これらを輪切りで見ていくと、先月に比べて高い低いというのが出てきます。そこでより細かく見にいくと、例えば二次面接通過率の数字が気になる、もしかして面接官の目線が変わったのか?などの課題を抽出することができます。

数字に踊らされると本来の目的を見失ってしまう可能性があるので、できるだけシンプルに要点を押さえながら、必要なところだけ深掘りしてアクションすることを意識していました。

 

まとめ

「いかにやりきれるか」が大事だと思っているので、丁寧にやるところと、要点だけ押さえるところのメリハリを利かせながらやるのが勝負ではないでしょうか。愚直にPDCAを回し続けることがポイントです。

 

Q&A

(ここから、ご紹介内容に対するQ&Aトークに入ります)

江成:吉成さん、ありがとうございます。今ご紹介いただいた内容について、質問をさせてください。チャネルごとの特徴を理解する、とありましたが、具体的にどこまで、どのレベルで理解しておくべきなのでしょうか?

吉成:たとえばエージェントの場合は、まず最初に特徴をヒアリングします。体制もそうですし、どのような候補者様を抱えていて、どのような会社で決定しているのか、どのように集客しているのかを聞きます。

といっても、最初の方は関係性もできていないので、自分たちから積極的に情報を開示します。エージェントの方が決定を出しやすいように自分たちが何ができるか?というスタンスでコミュニケーションを取ると、あちらからもいろいろと情報提供してくれるようになります。

ダイレクトリクルーティングの場合は、使ってみないとわからないので、基本的には「まず一旦やってみる」という感じですかね。

どこまでわかっていたらいいのか、に関しては、あまり答えはありません。KPIに届いていれば問題ないので、そのボトルネックになりそうなポイントを周辺情報として押さえるべきだと思っています。

江成:エージェントからの紹介が少ない、といったときに、どういう対策をしているのですか?

吉成:担当とじっくり話をしますね。実は、ヤフーのときはこのような考え方はなかったんです。知名度もあり、問題なく応募が来ていたので苦労はしていませんでした。ファーストリテイリングに移った頃が転機で、「常に応募が来る」ということが当たり前ではない、ということに気づいたんです。ユニクロという強いブランドがあるのになんで思うように応募獲得できないんだろう?というのをエージェントの方と一緒に深ぼっているうちに、エージェント各社の構造が見えてきたんですよね。

例えば、10件の応募のうち、1名がCAさんからの紹介で、9件はシステムによるマッチングだった。9件の中身を変えに行くにはどうしたらいいか相談すると、求人票を書き換える、というアクションが見えてきます。そうやっていろいろなロジックが見えてきたので、中堅も含め、エージェント各社の特徴を掴んで活用するというスタイルが見えてきたんです。

江成:なるほど。では、Chatwork様での課題感はいかがでしたか?

吉成エージェント側に、僕らのアカウントをどれだけ大事にしてもらえるか、という点ですかね。彼らの立場から考えると、ヤフーもファーストリテイリングも、「持ちたい顧客」なんです。一方Chatworkは成長ベンチャーではあるけど、採用に磨きもかかっていませんでしたし、何ならエージェントの担当すらついていませんでした。だから、ヤフー、ファーストリテイリングとは「見られ方」が圧倒的に違っていました。

それを前提に、じゃあどういうアプローチをするのか?を考えました。彼らの優先順位を上げてもらうために、面接官の経歴や特徴、組織構造などを細かく情報開示して、候補者のマッチングの理由も解像度高く伝えました。

ある種プライドを捨てて、エージェントの方に寄り添う姿勢を意識して取っていましたね。

江成:「候補者体験」という言葉がありますが、構造的には、エージェントの向こうに候補者様がいらっしゃるので、「エージェントの体験」を上げないと候補者様まで届かない、ということかもしれませんね。

各チャネルの特徴を捉え、スタンスを明確にし、メリハリを利かせながら関係性を築き上げていく。自社の採用活動を見直したい方は是非、真似をしてみてはいかがでしょうか。

吉成さん、本日はありがとうございました。非常に勉強になりました。

 

 

▼Chatwork株式会社(採用情報)
https://recruit.chatwork.com/

 

>>エージェントマネジメントを支援する「LiBのRPDサービス」について、より詳しく知りたい方はこちらからお問い合わせください
lib.rpd@libinc.co.jp (「LiBのRPDサービス」事務局)

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