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LiBzPARTNERS-STORY │「社外取締役人材が語るキャリアストーリーと経験知の社会還元」(中編)

ハイキャリア女性の転職支援とダイバーシティ&インクルージョンを推進する転職エージェント「リブズパートナーズ」(現:LIBZ 幹部ドラフト)は、転職のリアルがわかる&キャリアの選択肢が広がるプライベートイベントを定期開催しています。

2021年4月開催のイベントのテーマは「社外取締役人材が語るキャリアストーリーと経験知の社会還元」。ここでは、お2人とのトークを、前編、中編、後編、と3回にわたってお伝えいたします。

 

目次

1.自分のキャリアの軸はなんだったか。どのように作られてきたか

2. なぜ社外取締役を引き受けたのか

3. 社外取締役の役割や、必要となるスキルやマインドは

3. 今後挑戦していきたいことは

 

自分のキャリアの軸はなんだったか。どのように作られてきたか

別宮:
まず一つ目の質問です。ご自身のキャリアの軸は何か。どのように作られてきたか。と質問させていただきたいのですが。高岡さんからお願いします。

高岡:
先ほど申し上げた通り、私は「軸はこれ」というのを決めていなかったのですが、自分の中で一つ大事にしていることは、「信用」ですね。マネックスにいた時にすごく気付きがあったのですが、20代はがむしゃらに働ければいいと思ってたのですが、30代って多くの人にとって、時間的な制約が出てくると思うんですね、子育てや家族のお世話などで。そんな中で、周りで一緒に働いている人たちとの信頼関係の構築、この人はやんなきゃいけないときはやるから安心、という「信頼残高」を貯めていくことが大切だと思っていますし、なにか客観的に見て誇れる貢献をきちんと残していきたいと思っています。何かお仕事を引き受ける際においても、自分が期待以上の貢献ができるかを大事にしてきています。

渡瀬:
私の場合は、20代でゼクシィを立ち上げた、ことが礎にありますね。また、実は30代半ばで、リクルートとは資本関係がなかったスタートアップに出向しているんです。当時、リクルートがスタートアップを支援するビジネスを立ち上げようとしていて、私はスタートアップにまみれて何が求められているか探してくる役目で出向したんですね。そこでは、自分に生命保険をかけて、「何かあったら死んで借金返すんだ」という気概でやっている人たち、それこそ、まだ楽天が社員10名そこそこしかいない頃の三木谷さんのような方々と普通に会ってご一緒したんですね。私はこの尊い人たちを助けるか、もしくは自分はこの尊い人たちのように起業しよう、と思いました。その関係で、アントレプレナーオブザイヤーという、今では新日本監査法人がやっているイベントがあるんですけれど、当時、EYがグローバルにやっているイベントを日本に持ってこようという活動を、手弁当で仲間たちと始めたんです。同じような志を持つ仲間と一緒に新しいものを生んでいくエネルギーの中に、自分はずっといようと思いました。リクルートという大きい会社の中で、リクルートの方式に則ってやるということではなく、自由に新しいことをやっていきたい、というのが自分のキャリアの軸として育まれてきた感じですね。

別宮:
渡瀬さんの場合は、ゼクシィの立ち上げなどある種強烈な体験から、ゼロからサービスやプロダクトを生み出すということが、早いうちから軸になっているのかなと思ったのですが、高岡さんの場合は、「信用残高」を意識されてきたものの、これという軸を明確に持ちながら歩んできたわけではないということでですね。お二人の話を聞いていると、似ているところもありながら、それぞれの特徴が出ているなと思いました。

渡瀬:
チャレンジャーなのは共通点だと思いますね、笑。

別宮:
私が、求職者の方にキャリア面談するときも、WILLがないんです、という方もいらっしゃるのですが、これだけの経験を積んでいる方でも、明確に軸を早期から持っていない中でもキャリアを積んでこれるということは、それほど焦ることでもないのかなと思いました。

高岡:
世の中がどうなっていくかわからないじゃないですか。事業を作る、という渡瀬さんみたいな軸だったら分かりやすいんですけれど、この業界、この職種、というように軸を作っても、見通し切れないこともあると思うので、結果論、決めずにいた、というのは正しかったと思いますね。

別宮:
高岡さんも、いまも模索しておられる。それは必ずしもネガティブではなく、これから何ができるんだろう、というポジィティブなワクワクでもありますね。

高岡:
そうですね。経営というのに携わらせていただいてきたので、それを軸に、どんどん経験の幅を広げていくしかないかな、と思っています。

渡瀬:
安定的なポジションにいることが安定ではない、と思っています。不安定なポジションにいるほうが、どこに至って通用する強さになるのではないかなと思います。「うわ、やばい」、みたいな時のほうが鍛えられていますよね。

高岡:
はい、修羅場の数だけ、その分だけ、リーダーとして、プロフェッショナルとして、人として強くなるというように思います、笑。

別宮:
それは意志を持って選んだとしても、偶発的にアサインされた環境だったとしても、修羅場をいくつ潜り抜けたかの、数のほうが重要だということですね。

高岡:
自ら進んで修羅場を経験したくはないんですが、笑、振り返ってみると、修羅場は、自分はここまで耐えられるんだという自信にもつながっていくので、リスクもだんだんと取りやすくなるのだな、というのは、最近になって感じています。

 

なぜ社外取締役を引き受けたのか

別宮:
ではふたつ目の質問で。なぜお2人は社外取締役を引き受けたのでしょうか。まず渡瀬さんからお願いします。

渡瀬:
私は、一時期、社外取締役を引き受けた社数があまりに多くなって、現在は少し整理したのですが、これまでお引き受けした経緯を話すと、マックスバリュ社は、変わりつつある時代から取り残されているかもしれないこの業界を、自分が乗り込んでいって何かできることがあれば、と思って引き受けました。また、政府系金融機関の商工中金は、事件で経営陣が全員入れ替わることがあり、新経営陣として入りました。株式会社DLEという会社は、ある事件を契機にやはり経営体制が変わるタイミングで声をかけていただきジョインしました。このように、なぜか私を口説くときの口説き文句というものは、私がお世話になった方や大切な方から、「ちょっと戦場に一緒に行ってもらえませんか」「火中の栗を一緒に拾ってもらえませんか」というお誘いが多くて・・・笑、そういう方からのお声がけでしたので、それでは、お助けします、ぜひ一緒に戦場に行きましょう、というような、流れが多いですね。いろいろなシーンを見てきました。

高岡:
私は、渡瀬さんほどの武闘派ではなくて、笑。経営陣とは適度な距離感を持てる前提で、その企業がやっていることや経営陣への共感を大前提としていますが、そんな中では、お誘いいただく理由を重視しています。私のこういう経験やインサイトにニーズがある、こういう風に期待している、という理由をいただいた際に、その期待に答えられるかな、と考えてお引き受けしています。

別宮:
もう一点お伺いしたいのですが、結果的に社外取締役という形での引き受けなんですが、それにこだわりや意味はありますか。

高岡:
ないですね。キャリアゴールが社外取締役であるわけではないですし。私は、グローバルにおいても、日本は経営者が強い、と思ってもらえる日を夢見ているんですね。現在は、日本の経営者のグローバルでの評価は高くないことが日本全体としてすごく損していると思っていて悔しいです。長期的なゴールとして、自分が自らなのか、自分が何らかの形でサポート形なのか分かりませんが、そこに貢献したいなと思っています。

別宮:
お二方とも、社外取り締まりを引き受けた経緯はお誘いを受けて、ということだったのですが、やってみたいと思えるような、お誘いの仕方や内容だったんですね。

 

社外取締役の役割や、必要となるスキルやマインドは

別宮:
次に、社外取締役の役割とは何か、そしてそれを担う上での必要なスキルやマインドはどういうことか、ということなんですが。まずは高岡さんからお願いします。

高岡:
新米の私からですか、笑。そうですね、役割については、コーポレートガバナンスコードでも明記されていますが、抽象的なことをいうと、中長期的な企業価値向上、会社の持続性の促進に貢献する、ということだと思います。具体的には、経営陣の人選を株主に変わって担うとか、執行部にはないような新しい視点とかを導入してより良い意思決定に繋げていくことかなと思っています。ただ、逆に企業の執行側に自分もいたので、社外取締役から頓珍漢のことを言われても貢献度低いので、きちんと価値のある発言をしないと意味がないし、それができないのであれば意味がないのかなと思います。マインドセットにおいても、その地位にしがみつくとか、そういうのは当たり前ですが絶対にあってはならないなと思いますし、特に少数株主までの視点も取り入れて、きちんと企業価値と向き合って発言していく、というのが大事なのかなと思っています。そのようなマインドで、私は取締役会に参加させてもらっています。

渡瀬:
まず、社外取締役の役目は、シンプルに、経営の監督と助言指導です。なぜ社外取締役が「社外」なのかというと、社長の部下ではないということです。通常、社内の取締役は社長の部下なんです。社長から評価されて引き上げてもらった人。従って、通常の取締役は、社長に対してNOを言えない人たちなんですね。社外取締役は、「それはいけませんよ」と社長にNOと言う役割であることは、非常に重要なことであると私は思っています。私は、10億、時に100億の投資案件にも、「これはまちがっているな」と思ったら、NOと言う。社内の議論や材料が不十分だと感じたときや、自分の経営感覚に合致しなければNOを伝え、その理由を伝える。気に入らなければどうぞクビにしてくださいという覚悟で臨んでいます。「なるべく気に入られて長く続けたいな」なんていうことを、社外取締役は決して思ってはいけないんですね。これが、ぜひ本日ご参加の皆さんに一番知っておいていただきたいことです。そして、現在は執行役員会議の延長になりがちな取締役会が、本来は、5年後10年後の未来を決めるかじ取りをしていく経営判断の場であって、社外取締役には先を見通した経営判断能力が求められるということもお伝えしておきたいです。

別宮:
ひところから、社外の取締役を増やす動きが出てきましたが、数の理論になると、どうしても本質的な機能がまだ果たせていない企業が多いのかなと思いますね。海外企業はむしろ社外取締役がマジョリティですもんね。

渡瀬:
私が経験した中で言うと、それがお引き受けした理由でもあったのですが、社外取締役のほうが多いケースが2社ですね。社外取締役が持つ経営への影響力が全然違います。

高岡:
たぶん、私たちにお願いするくらいなので、コーポレートガバナンスをしっかりしたいと思ってらっしゃる企業なのかなと思います。私が社外取締役を務める2社とも、社外は1/3以上です。

別宮:
先ほどの話からすると、自分の部下でない、しっかりと指摘する外部の方が取締役会のマジョリティになればなるほど、CEOとしては、しっかりとした経営やディスカッションできるような取締役会にしていかないといけないということですね。

 

今後挑戦していきたいことは

渡瀬:
そうですね。私は色々な仕事をさせていただいていますが、テーマがありまして。現在、虎ノ門ヒルズにある、大手企業を専門とする新規事業のインキュベーションセンターでインキュベーションの責任者をしているのですが、トップが保守的だったり、組織が縦割りだったり、横の連携が取れず牽制が起こったりで新しい事業が生まれにくい体質になっている大手企業さんをお見かけします。「大企業病は治せるのか」というテーマに、チャレンジしていきたいなと思っています。事業開発を通して若い人たちを刺激して、外から治していく「お薬」になれたらいいなと思っています。

高岡:
私は、中長期的には、社会の負や課題の解決に、今までの自分が培ってきたスキルやノウハウや人脈やインサイトを使って、少しでも貢献出来たらと思っています。ジェンダーの問題だったり、先ほど話した、日本の経営のグローバルでの地位向上だったりを考えています。

後編につづく)

 

 

(この記事は2021.04.28に公開されたものです)

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