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~Deep Dive into HRシリーズ 第4弾ウェビナーレポート〜社内に浸透し、社外に染み出すカルチャーづくりの本質に迫る。手段としてのカルチャー・コミュニケーションからの脱却!

LiBでは、「社内に浸透し、社外に染み出すカルチャーづくりの本質に迫る。手段としてのカルチャー・コミュニケーションからの脱却!」と題し、株式会社マネーフォワード VPoC 金井 恵子さん、株式会社10X 取締役CCO 中澤 理香さんをお招きし、カルチャーづくりや浸透に課題を抱える企業の人事・広報担当者様を対象にしてウェビナーを3月15日(水)に開催しました。

 

本ウェビナーでは、事業と結びついたカルチャーづくりや社内への浸透方法について、「LiBのRPDサービス」責任者の江成が話を聞きました。

金井 恵子氏(株式会社マネーフォワード VPoC)
PROFILE
金井 恵子氏(株式会社マネーフォワード VPoC)
制作会社でデザイナーとして勤務したのち、2014年に創業期のマネーフォワードに入社。サービスデザイン、ミッションビジョンバリュー策定、デザイン組織の立ち上げなどを経験。2020年12月より文化浸透の責任者として、オフィス構築や全社総会などを始めとしたインナーコミュニケーションを通じて、文化醸成と浸透を行っている。
中澤 理香氏(株式会社10X 取締役CCO)
PROFILE
中澤 理香氏(株式会社10X 取締役CCO)
ミクシィ、Yelpを経てメルカリでPRの立ち上げから上場以降まで携わり、PRマネージャーを務める。退職後、フリーランスPR期間を経て、2020年10月より10Xに入社。2021年10月より取締役Chief Communications Officer。
江成 充(株式会社LiB RPDサービス責任者)
PROFILE
江成 充(株式会社LiB RPDサービス責任者)
2006年インテリジェンス(現パーソルキャリア)に新卒入社。2018年LiBに入社。2021年夏に女性に特化した社外取締役の就任支援サービスを立ち上げる傍ら、複数社の採用力向上支援に携わったことをきっかけにRPDサービスを立ち上げる。

はじめに

江成:このウェビナーシリーズは今回で4回目になります。前回までは採用に関する具体的なお話がメインで「明日から使える・真似できる」をテーマにしておりましたが、今回のテーマは「カルチャー」ということで、やや中長期的な視点でのお話になります。

ご登壇いただくのは、株式会社マネーフォワード VPoC 金井 恵子さん、株式会社10X 取締役CCO 中澤 理香さんのお二方。以前から「この方のお話をぜひ聞きたい!」というご指名をいただいていました。今日はよろしくお願いいたします。

 

カルチャーは何のために必要なのか?

江成:さっそく本題に入ります。まず、カルチャーやミッション策定したきっかけや背景をそれぞれ教えていただけますか?

金井:マネーフォワードでは、社員が80名ほどの頃にMVVC(ミッション・ビジョン・バリュー・カルチャー)を策定しました。社員数が少ない頃は似たような価値観を持った人が集まっているので、阿吽の呼吸が成り立って、事業を進めるにあたってそこまで苦労しなかったんです。

ただ、組織拡大していくにつれ、既存の社員が情報をキャッチするのが難しくなって、経営の意思決定の意図が伝わらなかったり、不信感が生まれて離職が増えてしまったり…ということが続きました。

そこで、マネーフォワードは何を目指し、どんなことを大切にしてきて、どんな軸で意思決定している会社なのか、という共通認識を改めて整理する必要が出てきたのです。

中澤:10Xは創業6年目なのですが、「Stailer(ステイラー)」というtoBの事業を始めてから、ここ3年ほどで15名から100名ぐらいまで一気に組織拡大しました。最初からわりと色の濃い会社で、カルチャーはミッション達成や事業成長のために必要な要素の一つとして皆が捉えていると思います。

先ほど金井さんがおっしゃっていた「意思決定のブレを減らすためのもの」というのはまさにその通りだと思っていて、例えばある仕事の進め方にAとBというどちらも間違いではないアプローチがあったときに、「どちらの道から行くのが10Xらしいのか」というのを、メンバーが共通理解を持っている状態が理想だと考えています。

江成:共通しているのは、大前提、事業成長やミッション達成のためにカルチャーをつくるという点ですね。

金井:そうですね。10Xさんもそうだと思いますが、ミッション達成に向けて皆で自走していくために必要なもの、というニュアンスで捉えています。

 

社内の巻き込み方

江成:とはいえ、「カルチャーづくりよりも事業成長の方が優先順位が高いのではないか」という声もありませんでしたか?特に人数が増えてくると、考え方も人それぞれになってくると思うので。

金井:かなりありましたね(笑)。当社がカルチャーづくりを始めた当時は、まだ今ほどミッションやバリューを言語化することが当たり前ではなくて、作り方や浸透方法などの情報が世の中に出回っていませんでした。

私の職務がデザイナーだったこともあり、「今はそっちの仕事じゃなくてプロダクトデザインの方に注力してよ!」という意見をもらうこともありました。経営陣の中でも最初はけっこう半信半疑だったり、自分とはどこか関係のない話だと思っている方もいたと思います。

ただ当社の場合、CEOの辻自身が過去の経験などからカルチャーづくりに対して強い思いと理解があったので、さまざまな意見がありながらも前に進めることができました。

中澤:当社ではあまりそのような声はありませんでした。代表をはじめ、前職でもカルチャーを大事にしていたメンバーが多かったというのもあります。「10Xらしさ」を可視化することの重要性に対してコンセンサスがある状態でした。

ただ、会社の成長と共に、よりローコンテクストにしていく必要性は感じています。金井さんもおっしゃっていましたが、人数が増えればコミュニケーションコストは増えますし、海外出身のメンバーが多くなってきたら英語を増やすなど、会社の成長にあわせて常に工夫していく必要がありますね。

 

社内への説明

江成:中澤さんは、CCO(チーフコミュニケーションオフィサー)として、コミュニケーションの大切さについて、社内でのコンセンサスを得るために図解して説明したそうですね。もしよろしければその図を見せていただけますか。

中澤:こちらですね。

これは、コミュニケーションズ本部の立ち上げ当時に社内で展開した資料です。コミュニケーションズ本部は社外向け情報発信と社内のインナーコミュニケーション、カルチャー可視化という両方の役割を持っているのですが、それがなぜ必要かというのを説明したものです。

スタートアップはどこも、人材採用が大きな課題だと思います。しかも採用して終わりではなくて、その後の活躍まで一連の流れがうまく回ることが非常に大事です。

人材獲得競争が激化する中、5〜10年前と比べると、会社の「中の状況」が透明度高く伝わる時代になっています。SNSなどメンバー個人のメディアを通して会社の雰囲気が滲み出ていくのです。そのとき、どれだけカルチャーが浸透しているかが重要になってくるわけです。

社内で大事にしている価値観や行動が浸透して、社外にもギャップなく伝わっていくと、それに共感した人が入社して、カルチャーフィットした状態で働くことができて、また良い評判が伝わって…という良いサイクルが回り、会社のファンが増えていきます。逆に対外的なイメージだけが良くても内部とズレがあると、中に入ってみたらちょっと違ったとか、社内のメンバーが楽しく働けていないとか、そういった悪い評判がまた外に出ていってしまい、ネガティブループになります。

ですから、社員との信頼関係をベースに、期待と中身の一貫性を持って10Xを知ってもらうことが会社の競争力につながるんだよ、という話をしました。

江成:まさにスタートアップの場合、まだまだ未完成な部分が多い中で人材獲得をするために、採用広報を頑張るじゃないですか。そこで社内の状態とのギャップが大きくなってくると、社員のメンタルが傷んできますよね。

中澤:そうなんですよね。だから「社内の人がしらけない温度感」というのは、社外の反応よりもまず大事にしています。

金井:外への発信よりも中の人たちへの浸透、というのは本当に同意です。それが一貫性となり、最終的に自社のブランドになっていくんですよね。

江成:外向けに発信するときは、中の人にも内容をきちんと説明をするんですか?

中澤背景を丁寧に説明するように心がけています。外からの見られ方、特に記事化されたことなんかは、当たり前ですがある程度一般化されますよね。例えば弊社の場合、男性の育休取得率が100%だったことがありました。社会的にも「男性育休」が話題になる中、数字はすごくキャッチーなので、取材していただいたときに、それが見出しになったことがありました。メディア側の論理では、それを強調したいと思うのは当たり前です。

しかし一方で、社内に目を向ければ、育休を取りたい人もいれば、取らないことを選択する人もいます。育休の取得期間も個人の事情によって異なります。10Xが実現したいのは、「その人がその人にとってベストな選択をすることができ、それを妨げるものがない状態」であって、育休取得率100%がゴールではないわけです。

ですから、記事として出たときに、社内向けには「記事の見出しはこうなっているけれど、会社としての考え方はこうだよ」というフォローをしたことがありました。育休を取らないことを選択する人が「100%という数字に影響が出てしまう」という懸念を抱く必要はない、ということを伝えたかったのです。このように、ギャップが生まれそうだな、と思ったときはできるだけ背景や意図を丁寧に説明するようにしますね。

 

カルチャーづくりの具体的なポイント

江成:育休の話が出ましたが、働き方に関する施策や福利厚生なども、事業やミッションとの接続を意識されているんですよね。

中澤:はい。こちらは一例ですが、弊社がプレスリリースを出した時の説明資料です。左側は出産育児や介護のサポートの制度、右側は居住地に関する制度についてです。

出産育児や介護の制度であれば、当社は「誰かの家庭を支えるインフラ」という領域で事業を展開しているので、社員自身も家庭を大事にしてほしい、というメッセージにしています。10Xの事業は時間をかけて成長していくものだと考えているので、長く走り続けるためにはどうしたらいいか、という観点での一つの取り組みとして位置づけています。

居住地に関する制度は、社員にとっての「働きやすさ」だけではなく、当社のビジネスの顧客、つまり小売りの事業者さんやそこを利用するお客様たちが全国各地にいらっしゃる中で、都心に住む人たちだけでユースケースを考えていていいのか?という視点を入れています。社員が全国各地に住み、そこでの生活を知ることで、事業にもポジティブな影響を与える…ということを添えて社外に発信しました。

一つ一つは小さいことですが、事あるごとに事業とのブリッジや、なぜ自社がやるのか?を添えることは意識していて、外向けにも社内にも背景を必ず伝えるようにしています。

金井:当社もバリュー策定時に一番最初にやったのは、「全部MVVCに紐づけて話す」ということでした。特に、社内にも社外にも発信する機会が多い経営陣には徹底してもらいましたね。

江成:そこの紐づけによって社員の皆さんの解像度も上がり、どんどん自分事になっていきますよね。では、マネーフォワードさんのバリュー策定時の、苦労した点や失敗した点などについて聞かせていただけますか?

金井:最初は、もともと存在していた行動指針が形骸化してしまっていて、それを浸透させてほしい、というのがオーダーでした。

左側が、創業メンバーがつくった行動指針です。でも、このハードな行動指針を浸透させるのはちょっと辛いな…と正直思ったんです(笑)。そもそも共感しづらいから浸透していないんじゃないかな、と思って。創業当時は自らの言葉で奮い立たせるという価値のあるものだったと思いますが、これから組織を拡大していこうという時に、ちょっと違和感のあるワードが多かったんですよね。なので、改めて新しくつくらせてほしいと提案したのです。

最初は、ボトムアップでつくれるようにメンバーに任せてもらっていました。エンジニアやデザイナー、ビジネスメンバーが横断的に集まり、プロジェクトを組んで議論しながら、行動指針のベースをつくってみたのです。でも、いざ発表するときに、CEOの辻が自分の言葉で思いをこめて語れなかったんです。よくこういうのはトップダウンでつくると失敗すると聞いていましたが、逆にボトムアップだけでもうまくいかないんだな、という学びがありました。

現場の皆が大事にしている価値観や会社の好きなところを吸い上げながらも、経営陣から「こういう会社であり続けていきたい」という意思を受け取り、経営陣にもコミットしてもらってメッセージをつくるべきだったんですよね。今振り返ると当たり前なのですが、失敗から得た気づきでしたね。

江成:なるほど。ボトムアップだけだとまとまりきらない、というのもありそうですね。

金井:そうですね。トップの思いとボトムの思いを融合させて完成させたあと、「つくって終わり」にせず、自分事として浸透させていくための施策も全社で行いました。まずは部長以上を集めて合宿を実施し、一つ一つの言葉の解釈をすり合わせていく、というのを丁寧にやりました。今でも人数が日々増えていくので、再浸透の施策には力を入れています。

こんな感じで、「皆さんが思っているマネーフォワードらしさってどういうことですか?」というのを最初に聞いたり、MVVCの言葉をどんな風に解釈しているのかディスカッションをしたりしています。

バリューやミッションは単語としては一般的なものを使うことが多いと思いますが、それを「どんな風に解釈するのか」というところにその会社の色が出る部分だと思っています。例えば「User Focus」という単語一つでも、マネーフォワードらしい解釈・らしくない解釈というのが必ずあって、それを出し合ってディスカッションしてもらうことに意味があると考えています。

新しく入ったメンバーは当然、解像度が上がっていない状態なので、既存メンバーの解釈などを聞くことで自ずと理解が深まっていくことを期待しています。

江成:たしかにどの会社様も素敵なワーディングをされていますが、それをどう解釈してどう体現するか、という認識のすり合わせは重要ですよね。

中澤:10Xでは、入社オンボーディングで「10X Values」に沿った行動を各自で集めてきてディスカッションする、というワークショップをやっています。

行動指針というものは、頭で理解することと、自分に落とし込んで行動できることの間に大きなギャップがあります。いろんな場で発信しているので、採用選考中などでも頭では理解してもらってるんですよ。だから入社後1ヵ月の間にはより理解を深め行動に繋げられるよう、ワークショップを実施しています。

入社後すぐ告知があり、1ヵ月の間に「あの人のあの行動がこのバリューに沿っていた」というのをメモしておいてもらい、1ヵ月後にそれぞれ発表するという内容です。

江成:お題があると、皆さんの行動により着目することができそうですね。ワークショップにおいては、逆に「その解釈はちょっと違うよ」といったフィードバックをすることもあるんですか?

金井:マネーフォワードでは、フィードバックという感じにはしていませんね。あくまでもチームのメンバーで話し合ってもらって、「これはその通り!」「これはちょっと違うんじゃない?」というディスカッションが生まれるのを見守っています。

当社は事業も多角化しているので、同じ「User Focus」という言葉でも、法人向け事業と個人向け事業では捉え方が微妙に違ってきますからね。

中澤:10Xでも同じですね。合っているとか合っていないではなく、お互いにシェアすることで気づきを得ることをまず大事にしています。「これは正しい」「これは違う」というダイレクトなフィードバックを重ねると、結局誰かの判断を仰ぐことになってしまいがちです。そうすると、その人らしい価値発揮の可能性を妨げてしまいます。頭の中でバリュー体現のバリエーションをたくさんつくることを大事にしています。

 

浸透施策

江成:なるほど。ありがとうございます。10Xさんでは、ワークショップの他にも、さまざまなバリュー浸透施策に取り組まれていると伺っていますが。

中澤:はい。先ほど申し上げた「事あるごとに伝える」ための施策で言うと、まず一つは全社定例でのピックアップです。

当社では「Unipos (ユニポス) 」というお互いに感謝を伝えるツールを導入しているのですが、そこで各バリューのハッシュタグをつけるようにしています。そこからピックアップして、感謝を贈った社員に内容を紹介してもらいます。社内で起きていることや誰かの良い行動が可視化され、全員がさまざまな例に触れることができます。

もう一つは、ポッドキャストです。新入社員や社内プロジェクトの紹介をしているのですが、新入社員のインタビューの中では「好きなバリュー」について必ず質問します。入社1ヶ月くらいの新鮮な思考で答えてくれるので、社員はもちろん、採用候補者にもイメージが湧きやすいんですよね。

江成:ユニポスによる「発見」とのかけ合わせで、相乗効果がありそうですね。マネーフォワードさんはいかがでしょうか?

金井:当社も近いことをやっています。毎週の定例で、経営陣からバリューとカルチャーについてのスピーチをしてもらうのですが、そこでできるだけ自分自身の言葉で話してもらうようにしています。「他社の事例の、ここにとてもUser Focusを感じた」とかそういう話ですね。バリューの策定が2016年なので、もう6年近くずっとやり続けています。

中澤:6年間続けるってすごいですね!

金井:さらに、「カルチャーヒーロー」といって、カルチャーを体現した人の表彰も行っています。受賞者によるナレッジスピーチというのがあって、どのように解釈し、どう体現したのかをシェアしてくれます。10Xさんのポッドキャストもそうだと思いますが、身近なメンバーの体験談はけっこう刺さるんですよね。

 

社内の協力を得るには

江成共通するのは、頻度高くコツコツ継続することがポイントということですね。少しいじわるな質問になりますが、こういった施策は目に見えて効果が出るわけではないじゃないですか。そこに対して経営陣から何か言われたり、巻き込みに難しさを感じたりすることはありますか?

金井:私たちの場合は冒頭に申し上げた通り、意思疎通がうまくいかなくなったり、社内の空気がギスギスしてしまったり…といった、組織運営上の課題が出てきた頃だったんですよね。そこにマネージャーたちが苦しんでいたので、課題解決のための施策として進めることができました。

バリューやカルチャーを設定することで、採用基準も固まるので、そこから組織の雰囲気が劇的に良くなっていき、皆がそれを体感することができたので、今の積極的な協力体制に繋がっているのだと思います。

中澤:効果が見えづらいという話はけっこう難しい問題ですよね。売り上げに貢献しています!と言えたら強いですけど、そんなにシンプルなことではありません。

ですから、草の根的に社内になんとなくの共通認識をつくっていくのが大事だと思っています。10Xでは、外との関わりが多いメンバーが率先して、「取引先の方がうちのポッドキャストを聞いてくれていて、それで商談がうまく進みました!」みたいな情報を、Slackや会議の場でシェアしてくれたりします。そういう情報の積み上げによって取り組みの価値への理解が深まり、競争力に繋がっていくんだと思っています。

PRの反響はなかなか自分たちだけでは感じにくいので、フィードバックをください!といつもお願いしています(笑)。

江成:なるほど。では関連して、いただいている質問を紹介します。「浸透施策に関して、評価方法やKPIがあれば教えてください」ということですが。

金井:私たちの場合、半年に一度サーベイを実施しており、その中に「マネーフォワードはMVVCが浸透している会社だと思うか」というチェック項目があります。ただこの数値も、浸透施策だけが影響しているものではないので、これだけを追いかけるというのは本質的ではないなと思っていて。

ですから、浸透活動にどのくらいの人が協力してくれたのかなど、いろんな角度で試してみています。

 

オフラインでのカルチャーづくりとコミュニケーション設計

江成:さて、今はマスク着用に関しても緩和され、オフラインイベントも徐々に復活…というところも多いと思いますが、オンラインと併せると、コミュニケーション設計も複雑化しますよね。

中澤:10Xでは、3ヵ月に1度の全社オフサイトの機会を大事にしています。先ほどお伝えした通りどこに住んでもよいのですが、全社オフサイトは原則参加という形にしています。もちろん個別事情がある場合は柔軟に対応しますが、新入社員も多いタイミングなので、3ヵ月に1度と頻度高く実施しています。

オフィスに全員は入らないので、会場をレンタルし、コンテンツは半期のメッセージみたいなときもあれば、社員の交流メインのときもあります。やっぱりこれをやるとなんとなく、社内の士気が上がるんですよね。部門を越えた声がけがしやすくもなります。

金井:私たちは社員数が5年間で5倍ぐらいに増えたこともあり、フロアを増床しました。「お金を前へ。人生をもっと前へ。」というミッションを掲げているので、社員の人生も豊かにしたいと考えたときに、会社をただ働くだけのハコにしたくないという思いがあって。ここで知り合う皆さんと素敵な関係を築いて、成長できるきっかけになればいいなと考えています。フロアの増床はその思いが背景にある、と説明しているので、リモートワークがなくなるのでは?みたいな不安の払拭につながっていると思います。

出社体験を向上させるために、就業後にアルコールを提供したり、有志でイベントを開催しやすい仕組みを整えたりして、出社が楽しみになるような仕掛けをつくっています。

社内報を立ち上げたときにも感じたのですが、どんな人がどんな思いで働いているのかを社員同士が知ることで会社への愛着って高まると思うんです。コロナを機にリモートがメインになったことで、業務上関わりのない人とはさらに知り合いにくくなりました。それを解消すべく、コミュニケーションイベントを手厚くやろうとしているところです。オフラインの場は、もっともカルチャーが浸透しやすいところだと思います。

江成:ありがとうございます。では最後に、事前にいただいていた質問をご紹介します。事業部間コミュニケーションで工夫されていることはありますか、ということですが。

金井:マネーフォワードでは、社員総会を半期に一回やるのですが、それを全社横断プロジェクトで盛り上げてもらっています。それまでは人事部が主管で企画していたものを、全部署から立候補してくれたメンバーが企画や運営することで、カルチャーを体験する良い機会になっていると思います。

まだ会社の規模が今ほど大きくなかった頃は、ピザパーティのようなカジュアルな形で「わかりあう会」を実施して、マネーフォワードでやりたいこと、困っていることなどをシェアする場を設けていました。自分の場合、デザイン思考を浸透させたいと思っていたので、まずは皆さんの悩み事を聞き、それを解決するために何ができるかを考える…というのを繰り返し、関係構築をしていきましたね。

中澤:10Xの場合、というより自分自身が意識をしていることですが、社内コミュニケーションも外向けのPRも、「事業やプロダクトの状況を理解している人がやっている」というのがすごく重要だと思うんです。それと切り離されたところでカルチャー的な企画だけをやっていると、どうしても温度感がズレたものになりがちです。巻き込んでみんなでやろう!と意気込んでも、「あの部門は今それどころじゃないらしいよ!」みたいなのはよくあることです。

それぞれの部門が大事にしていること、それぞれの部門にとってのメリット、という受け手視点を意識して伝えると、共感を得やすいんです。そのためには、私は足を使うことを大事にしています。現場に一緒に行ったり、プロジェクトに入ったり、単にオフィスに出社して誰かと話すだけでもいいんですけど、インプットを増やすことを意識していますね。

金井:それは本当に大事ですよね。横断部門で経営と近い場所にいると、現場の温度感とのズレはどうしても発生します。自分はたまたま事業側出身なのでわりと現場の温度感を理解しやすいのですが、その感覚を持っていないと、ただのドリーミーな人になっちゃうので。

江成:なるほど。確かにそうですね。

金井さん、中澤さん、本日は大変勉強になるお話をありがとうございました。社内に浸透し、社外に染み出すカルチャーづくりにウルトラCの施策はなく、地道な活動をコツコツ積み重ねていくことが大事だということがよくわかりました。

 

 

 

▼株式会社マネーフォワード(採用情報)
https://recruit.moneyforward.com/

▼株式会社10X(採用情報)
https://10x.co.jp/recruit/

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