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【イベントレポート】 ジョブ型採用の秘訣は!?相手を知り、自分を知ってもらうために行っている工夫

HR Knowledge Camp 2021は、『激動の2020年を経て、2021年の「雇用」や「組織の在り方」はどう変わるのか?』をコンセプトに掲げ、各テーマを代表する経営者・人事責任者を招いた1時間のトークイベント。(全6回開催)

6日目となる2月22日は、「社員雇用だけで成長を目指す組織はもう古い?ジョブ型雇用の最前線。」をテーマに、株式会社うるる NJSS事業部 営業部長 清水氏、株式会社オンリーストーリー代表取締役 平野氏に登壇いただきました。

 

【登壇者】

株式会社うるる
NJSS事業部 営業部長
清水 希氏氏

2012年10月、株式会社うるる参画。前職で営業企画に携わっており、当時参入していなかった入札市場開拓を着手。また現在部長を務めているNJSSを契約しており、入札市場における情報収集、サービス活用経験を活かし、株式会社うるるの入札情報速報サービス【NJSS事業部】に参画。2019年4月より、顧客解約率の改善をミッションとし、NJSS事業部にCS(カスタマーサクセス)を立ち上げ。NJSS新規顧客へのサポートフロー、契約の更新までの運営を構築。2020年9月よりNJSS事業本部制に伴い、マーケ、IS、FS、CSをあわせた営業部立ち上げに伴い、営業部長に就任。

 

株式会社オンリーストーリー
代表取締役 平野 哲也氏

1990年生まれ。父も叔父も近所も経営者という環境で生まれ育った。2013年早稲田大学政治経済学部卒業。2014年2月株式会社オンリーストーリー設立。ベストベンチャー100、はたらきがいのある会社ランキング日本5位、アジア25位等の実績。2020年に総額約3.45億円の資金調達を実施。決裁者のマッチング支援SaaS~ONLYSTORY~を運営。

 

【ファシリテーター】

株式会社LiB
共同創業者 Co-founder
佐藤 洋介

2002年、新卒で株式会社リクルートに入社。主にHR領域で営業や企画の業務に従事。2012年株式会社リクルートキャリア設立プロジェクトを担当し、中途採用事業の事業企画および経営管理を担当。2014株式会社LiBを創業メンバーとして参画。現在は”クイックプロサーチ”という業務委託紹介事業の事業部長に従事。

 

リモート化による分業型の課題

――ジョブ型で人材を採用するなかで、直近感じている課題はありますか?

清水さん:

この2年くらいジョブ型採用をしますが、一番の課題は正社員での雇用ですね。弊社には、『うるるスピリット』という行動指針があります。

その一部に、「当事者意識を持って、納得して働く」「ベンチャースピリットを持ち、成長し続ける」という言葉を掲げていて、主体性を持ち、自ら課題化し自走できるような人材をイメージしています。ただ、最初からこのような志向性がある人もいれば、経験値を高めてその志向性を積み上げていく人もいます。

大事にしている行動指針を体現している人に入社いただくには、やはりジェネラリストのようなかたちでの採用となっていたので、それが弊害としては感じていました。

――平野さんの企業では、正社員が直近7年で2人しか辞めていないということですが、悩みや失敗はありますか?

平野さん:

フォーエバーしくじりで、悩みはつきません。この1年でも社員数が230%ほど増えているなかで、「社員数の増加による課題」「事業を分業型による部門間の連携の課題」「リモートシフトによる課題」の3つがありました。

特に、部門間の連携が大きな課題でした。例えば、営業とCSでは見ている数値が違うのと、そこにリモートの影響もありコミュニケーションロスが顕在化しました。あとは、価値観の連携ですね。甲子園出場を例にすると、本気で甲子園目指そうぜ派と、みんなで楽しくバランス取りながら野球楽しもうぜ派のなかでの価値観のズレによるチームワークの齟齬みたいなものはありますよね。

清水さん:

分業における課題はありますよね。それをどう克服されましたか?

平野さん:

僕たちは、『アメリカ・ロシア・宇宙人理論」と言っている、アメリカとロシアが冷戦した時は、宇宙人を到来させるというものです。主語が国で戦っているところに、やばい宇宙人きた時、「これ国が単位ではなく、地球だな」となりますよね。その時に必要なのは共通言語をつくること。主語をIからWeに変えて、お互いに働きやすくするために何が必要なのかを話すようにしました。

――『アメリカ・ロシア・宇宙人理論』ですか。ユニークですね。では次に、活躍を期待できる人材の採用について、有効だと感じる手法があれば教えてもらえますか?

平野さん:

デート期間を設けることですね。つまり、恋愛で付き合うときは、絶対デートしますよね。

でも採用は、面接して採用して働くというステップで、デート期間がないからミスマッチが起こると思っています。デートしてみたら、思っていたのと違うことお互いにありますよね。僕たちは面接の後、1ヶ月ほど働いてみることを提案しています。求職者さん側にも僕たちを見てほしいですと、全部フルオープンです。これによってミスマッチ率は大幅に低減しました。

あとは、採用したい人には100枚スライド作戦を行なっています。本当に採用したい人たちは、他の会社さんも狙っていたりしますよね。特に大手企業には福利厚生などの要素では勝てないので、オーダーメードのスライドを100枚作ります。オンリーストーリーでなければならない理由や、メンバーからの声、オンリーストーリーで働くことにより描ける将来のキャリアプランを作っていたりします。

100枚スライドを渡すタイミングは重要です。初めて会った時に、100枚スライド作って渡したら激重ですが、1ヶ月実際に働いていて相手を知ったタイミングで渡すスライドなら整合性が取れると思っています。この取り組みで離職率の低下や、事業成長に繋がっていると感じます。

――気になったのは、採用したいと思う人が、デートに応じてくれない時はどうしていますか?

平野さん:

デートに応じてもらえるように、求職者一人ひとりに事前に会社のカルチャースライドを送り、事前に魅力付けをする工夫を繰り返し行っています。これが結構大事ですね。

――清水さんはいかがですか?

清水さん:

面接時の形態を変えました。以前は20分くらいしか面接時間を取っていませんでしたが、1時間のうち最初の30分は私たちからの質問、残りの30分は求職者側からの質問で、双方がマッチしているかどうかの判断を行えるようにしています。弊社のことは、包み隠さずお答えしているので、離脱される方もいますが、入社していただく方は、目線が合った状態で働いていただけています。

あとは、業務委託という選択肢を作ったことです。就業時間はフルで働けないけれど、1時間削れば働ける、経験豊富な方がたくさんいます。実際に下期に入ってから業務委託の方が6名入社していますが、みなさんスタンスも合っていて、飲み込みも早くて活躍されています。そのうえでまずはジョブ型で、限定的にでも成果を挙げていただくスタートは新しい手段だと思っています。

 

相手を知り、自分を知ってもらう時期を設ける

――活躍を期待している方が、実際に活躍者になっていただくために打っている施策はありますか?

平野さん:当社内でのハイパフォーマーの特徴を言語化すると、「船をつくる人」です。

クレドにも「船に乗るな、漕げ、創れ」というメッセージがあります。会社を船に見立ててイメージしてほしいのですが、会社で働くことに対して、乗る意識の人なのか、それとも自分から作りにいくのかの違いは大きいと思います。

テーマであるジョブ型と、メンバーシップ型の対比でいうと、つくる船の対象が違うのかなと感じます。メンバーシップ型の場合は会社をつくり、ジョブ型の場合はその部分であるプロダクトや事業傾向が強いです。その型はどちらでもいいですが、抱く感情が2つのタイプで結構違うと思います。

言い方が強いかもしれませんが、船に乗る側の人たちが抱く感情は、不満が多い傾向にあります。船を自分で動かしてないからこそ起こる現象なんですね。逆に船の舵を握っている人は、右でいいのかな、左なのかなという不安を感じる傾向があると思っています。こちらを1ヶ月のデート期間や、面談の質問で見極めています。

余談ですが、経営者や起業家に向いているか考える時も、どちらの感情の方がより自分が耐えうるかの観点から考えると面白いと思っています。不満を言うことが精神安定剤になっているタイプもいれば、逆に不安を抱いているタイプは船をつくっている側の証明であるとも言えると思います。どんな船の操縦性を持っているかを認識しておくのは必要と思います。

清水さん:

弊社で意識しているのは、相手の能力や考え方をまずすべて承認することですね。結果にある背景を理解する意識をしています。例えば仕事がゆっくりな人にもなんらかの理屈があると思うんです。基本的には業務に関する1on1、多少オフで話せる1on1を月次で行ったり、斜め1on1という一番遠い組織の所属長と話す場も四半期に1度行っています。

 

 

課題を見極め、改革するために施策の数を打つ

――今、両者では正社員だけではなく、業務委託の社員さんやインターンの方もいると思いますが、チームビルディングするうえでの工夫を教えていただけますか?

平野さん:

改革100本ノックを打ちました。改善じゃなく、改革です。朝礼や社内のコミュニケーションのやり方など、細かい改革を100本です。

ビー玉理論と呼んでいますが、課題をボウリングのセンターピンに見立てた時、ボウリングの玉は投げられないんですよね、ベンチャーのようなリソースが少ない企業は。サイズでいうと、ビー玉くらいなので、ビー玉を100個用意して、ボウリングのセンターピンに向けてひたすら投げまくるんです。

ピンを見極めることと、そのピンに対して数を打ちまくります。50個では足りないけど100個だと倒れる現象があるかなと思います。

参考までにカルチャースライドという、カルチャー浸透のために行った施策をお話できればと思います。

会社のカルチャーとは改めて何なのかを図字化したり、例示してみたり、多面的に見せました。僕らは、強くていい会社、「つよいい会社」をつくるという、なんともアートな話をしているわけですが、理念はアートなのでアートの説明は難しいし、なかなか浸透しづらいです。

ひたすら突き詰めてやっていったりすると、一定数を打ったところでセンターピンが倒れていき、後ろのピンが倒れていくかなと思っているので、施策を見極めて打ちまくります。そのうえでカルチャースライドは特に効果的な施策だったと思います。

――組織をまとめている方に多いと思いますが、言葉が伝わらなかったときに、なんで伝わらないんだよ、伝わる人がほしいんだよという方に行きがちですよね。そこを伝わるまで行動されているのは特殊だなと思います。だからこそ、結果的に7年で数名しか辞められていない現象につながるのだと思います。

清水さん:

弊社の会社単位での取り組みでは、経営者を含めたチーム長を「コア」、チームメンバーを「コアラー」と呼んでいるのですが、そのメンバーで目線が合っているかを定点チェックしています。具体的には、ある設問に対してグラフ化してそこの乖離や波形に大きなギャップがないかをチェックをしています。同じように、取締役から部長陣、部長陣から課長陣、課長からリーダー陣の目線があっているかを段階的に確認しています。

――なんとなく施策をやるのではなく、ちゃんと浸透しているかどうかを見ること、徹底することは重要ですよね。当事者意識を持てではなく、どう当事者意識を持てる仕組みを作れるかというのが人事と経営のポイントなのだと思いました。お二人とも、本当にありがとうございました!

 

 

(この記事は2021年3月に公開されたものです)

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