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【イベントレポート】 合理化が加速する2021年だからこそ、非効率な採用活動が魅力付けにつながる

HR Knowledge Camp 2021は、『激動の2020年を経て、2021年の「雇用」や「組織の在り方」はどう変わるのか?』をコンセプトに掲げ、各テーマを代表する経営者・人事責任者を招いた1時間のトークイベント。(全6回開催)

1日目となる2月15日は、「VUCAの時代へ突入した2020年を経て、2021年の採用はどうなる?」をテーマに、株式会社サイバーエージェント 専務執行役員 人事管轄採用戦略本部長の石田氏、オープンワーク株式会社 代表取締役社長の大澤氏に登壇いただきました。

 


【登壇者】

株式会社サイバーエージェント
専務執行役員 人事管轄採用戦略本部長
石田 裕子氏

2004年新卒でサイバーエージェントに入社。広告事業部門で営業局長・営業統括に就任後、Amebaプロデューサーを経て、2013年及び2014年に2社の100%子会社代表取締役社長に就任。2016年より執行役員、2020年10月より専務執行役員に就任。人事管轄採用戦略本部長兼任。

オープンワーク株式会社
代表取締役社長
大澤 陽樹氏

東京大学大学院卒業後、リンクアンドモチベーション入社。中小ベンチャー企業向けの組織人事コンサルティング事業のマネジャーを経て、企画室室長に着任。新規事業の立ち上げや経営管理、人事を担当。2019年11月にオープンワーク株式会社取締役副社長に就任。2020年4月、代表取締役社長に就任。

 

【ファシリテーター】

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株式会社LiB
LiBzCAREER営業部長
江成 充氏

2006年インテリジェンス(現パーソルキャリア)に新卒入社。人材紹介の法人営業・キャリアアドバイザーに従事。人材紹介と求人広告のマネジメントを経て2018年11月に株式会社LiBに参画。営業部長、転職支援部長を経て再度営業部長に着任。コロナ禍で40本を超える自社・共催ウェビナーに登壇。「日本中の一人ひとりが“自分以上の自分に出会える“場づくり」を掲げる。

 


働きがいのある会社ランキングに、毎回ランクインの理由とは!?

――まずオープンワークさんが行っている口コミ評価で、サイバーエージェントさんが業界平均よりも高いとのことですが、特徴を教えてもらえますか?

大澤さん:

オープンワークが毎年行なっている、働きがいのある会社ランキングで毎回ランクインをしているサイバーエージェントさんなのですが、ITインターネット業界とサイバーエージェントさんを比較すると、サイバーエージェントが右半分に突出しているのがわかります。

社員の士気や風通しの良さ、社員の相互尊重はもちろん、特に20代成長環境の点数が高いですね。

石田さん:

あくまで私個人の意見ですが、肌感覚にかなり近い評価です。右に突出している項目は特に自信を持っています。「挑戦と安心はセット」とよく社内で言っていますが、挑戦環境と安心環境の両方揃っていることが特徴です。具体的には、挑戦した結果、仮に失敗したとしても次のチャレンジの機会があります。私自身も子会社2社の代表として挑戦する機会をもらい、どちらも撤退するという大きな失敗もしました。

振り返れば悔しい経験も多いですが、これが他の社員にとっても、失敗しても次のチャレンジができるという事例を示すことに繋がっていると思うんです。

――挑戦と安心はセットと言われている一方で、業績低迷者には強めのコミュニケーションをするということも伝えられていますが、心理的安全性と挑戦と失敗を共有することの境目は社内でどう作られていますか?

石田さん:

まず業績が悪い、成果が出ないから、ローパフォーマーとして扱うということは一切ありません。ですが、価値観や仕事に対する姿勢にミスマッチがある場合は、「このままだとお互いにとって良くないので変えていきましょう」というメッセージを出していきます。

ライン引きは難しいですが、成果を出している人にはそれに見合った抜擢や報酬を出していきますし、成果を出そうと全く努力しない、指摘に対して何も変えようとしない人が、そのままにされるという社風ではありません。

――組織風土と制度を両輪で運用できている企業は多くないと思うんですが、サイバーエージェントさんにはどちらもありますよね。

石田さん:

ありがたいことに、いろいろな企業の方に当社の人事制度や組織風土について質問いただく機会があります。人事制度やその考え方は社外にもオープンに公表していますが、そのまま自社に持ち込んでも上手くいかないことが多々あると思います。私たちも他社さんから沢山学ばせてもらっていますが、あくまで自社の社風に合ったオリジナルなものに転換していく必要があるのだと思います。

大澤さん:

サイバーエージェントさんは、資本を使いながら、事業を多角化できる企業なので、表面だけ真似すると痛い目に遭いますよね。

 

 

組織文化と事業成長に相関はある

――組織文化と事業成長は相関しますか?

大澤さん:

組織に投資して意味があるの?と聞かれることもありますが、意味があると学術的にも証明されています。アメリカでは2000年代から、人材資本は財務指標や株価に相関性があると言われています。

ニワトリ卵の考え方ではありますが、事業が良くなるとそれにより人材投資ができるというデータも、組織文化が良いから、ゆくゆく財務や株価にも影響してくるというデータもあります。残業時間は働きがいと相関性がないというデータも発表されていたりする。組織文化が強いからこそ、事業が変わってもついてこられるのかもしれないですよね。

石田さん:

IT業界という前提はありますが、当社では広告事業からスタートして、メディアやゲームなど、さまざま事業に参画してきましたが、市場の変化に合わせて事業内容が変わっても、その変化に対応できる人が多いですし、もともと採用の入口から変化対応できる人を採用しています。結果として、変化に対応できるチームや組織、会社になっているのだと思います。

――入社する人は何を求めて入ってきますか?

石田さん:

過去数年分のデータを見ても、「人」と「組織」に魅力を感じて入社を決めていただく方が多いです。事業内容だけを重視するのではなく、働く社員や会社のカルチャー、社風が好きという回答が一番多いですね。

――具体的に採用の際に見ているポイントはなんですか?

石田さん:

採用活動は会社が候補者を選ぶものではなく、お互いが選ぶものだと考えています。どんなに良い会社だとアピールしても、実態が伴っていないとすぐに嘘だとバレますし、入社してからもお互いにとって良くないので、誠実にありのままを見せていくことを意識しています。

採用活動には、かなり手間をかけていますね。データ化の時代で効率性が求められる中、人や事業、会社を知ってもらうために、とことん納得がいくまで会社を見てもらい、社員に会ってもらっています。選考フローで面接回数はもちろん決められていますが、候補者が迷っていれば親身になって何度でも相談に乗っています。

学生さんからは、当社のインターンシップは珍しいとよく言ってもらいます。他社さんだと、グループディスカッションなどを通して、ずっと見極められている、監視されていると感じるそうです。当社ももちろん選考の要素はありますが、インターンシップでは、社員がほぼグループの一員として真剣に一緒に考えてアウトプットを導き出すようなスタイルです。インターンシップにしろ、面接にしろ、面談にしろ、クロージングにしろ、ここまで手間をかけている分、武器になっていると感じますね。

大澤さん:

2021年の採用でいうと、採用が長期化する傾向にあると感じます。口説ききれないんですよね。コロナ禍で効率化は進んだ分、逆に非効率なことが魅力になるんだと思います。

思いつきですが、2021年の採用のポイントは、「合理化が進んだ分、あえて非効率な採用活動に取り組むこと「ハンティングより、時間をかけてフィッティングしていくこと」がキーワードになると思いますね。

石田さん・江成:

もう、まとめですね(笑)。

江成さん:

中途で言うと、応募から内定承諾が約1週間短くなっているんですよね。主な要因は、オンラインで話ができるので日程調整の難易度が下がったこと。同時に応募しても面接にいけることがですが。だからこそ、相対比較ができる分、母集団形成の時代は終わったのだと感じます。

石田さん:

エントリー数をKPIにすることは否定しませんが、エントリー数を最大化することよりも、採用人数のうちどれだけ活躍確率が高い人を採用できているかが大事だと考えます。だからこそ、効率的に採用活動を行うことと、あえて非効率に行うことを共存させていくことが必要だと思います。

 

「相互尊重」が従業員満足度のポイント

大澤さん:

コロナ禍で変わったところを調べた時に、一つだけ「社員の相互尊重」というワードが出てきました。例えば、新入社員が入社して一人とも会ったことがなかったり、なかなか協力しあえないことによる不信感に苦しんでいる企業も多い。だからこそ、相互尊重が高かった会社は点数が上がっています。

――Before・After関わらずに相互尊重が高かった企業、コロナ禍の時期に相互尊重が高くなった企業があると思います。後者の方はどんな取り組みをしていったのでしょうか?

大澤さん:

コミュニケーション施策に積極的に投資した企業は高くなっていますね。困っていることに関して誰かにすぐ相談できる仕組みを作ったり、利益を出しつつ従業員の命を尊重する対策をしていた企業はスコアが上がっています。

特に、ドラックストアや百貨店は如実に取り組みがスコアに反映されており、明暗がわかれましたね。

――もともと文化や制度が決まっていない中で、コロナが来てしまいましたが、反射神経がある企業が上がってきたんですね。

石田さん:

反射神経という言葉、良いですね。変化に対してどう対応するか、会社としての方針をどう打ち出していくかは従業員としても気になる部分ですよね。ただ、早過ぎても良くないのだと感じます。とりあえず、時代の波に乗ろうとしてよく考えずに方針を決めたり、損得感情だけで動いたりすると、途中からの方針転換が難しくなり、言った手前やらなければと苦しんだりすることもありそうです。流れを的確に捉え、従業員の声を聞いて、悩みの障壁を取り除いてあげることが大事ですね。

――サイバーエージェントさんは、『GEPPO(※)』で調査もされていますよね。

石田さん:

はい。GEPPOというツールを使って、社員のコンディションを毎月リアルタイムに見ていますし、経営陣も役員会で確認しています。社員の声に対してすぐに手を打つので、経営に声が届くという安心感や風通しの良さに繋がるのだと思います。

(※)人事における「個人の課題」と「組織の課題」を見える化し、働き方改善を個人・組織の両方からささえるHRサーベイ

 

 

変化に対応しながら、丁寧な採用活動を

――最後に2021年の採用活動のポイントを教えてください。

石田さん:

これだけ変化が激しい今、変化に対応しながらも、何が本質的な課題かを常に見極め、自社に合う打ち手を模索し続けていくことが大事だと思います。

大澤さん:

合理化が加速するからこそ、より丁寧な採用活動が求められてくると思います。頭数を合わせるハンティングではなく、時間をかけてじっくりと自社に合う人材を見極めるフィッティングを意識していきたいと思います。

 

 

 

(この記事は2021年3月に公開されたものです)

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